Challenger

佐川一信 佐川一信署名

早稲田大学大学院法学研究科修了、法学研究者の道を歩み、早稲田大学中央大学茨城大学など各講師のかたわら、金属加工会社経営。1978年水戸市民の会を主宰し「市民からの出発」を発刊。84年水戸市長選挙に『市民派市長』として当選。

92年3選されたが、93年8月茨城県知事選挙出馬のため退任。中央官僚が地方を制覇する、と地方自治の危機を訴え、無所属無党派で30万票を獲得したが僅差で敗れた。95年死去。著書に『ミネルヴァの梟が翔びたつ日』(毎日新聞社)『水戸発地方からの改革』(日本評論社)がある。

2007年、水戸市名誉市民の称号が贈られた。

ドン=キホーテの像

その頃、まだ私は24歳になったばかりだった。しかし、私の生活はだらしなく、人見知りするほど孤独なものだった。

午前10時だというのに薄暗く、朝日さえ差さない地下室に入った。昨日から積み残しておいた本にぼんやりと目を落とす。やがていつのまにか時を忘れ、「終館ですよ。鍵を閉めますから」という事務員の声に促されて、部屋を出た。

こうして図書館の一室で、大学院時代の数年間を過ごした。

弁解するわけではないが、私の経験といえば、20代の10年間を大学で過ごしたことが、今のところ最も長いものである。したがって自らの経験を通して知り得た事実や考えたことを語れと助言して下さるが、実は私の最も大きな経験といえば、惰眠をむさぼった読書三昧の日々でしかないのである。

1985.7.28 朝日新聞掲載 「日曜随想」より抜粋

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